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久世

Author:久世
元HNは「微雨」「雨月」でした。
「久世」に改名しましたが、どれも私には違いないのでお好きなHNで呼んでください。

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純文学コンビ

Category : メイン創作小説
「こんにちは、説さん。涸月つらら先生の新刊って、どこにありますか?」
日が傾く時間、決まって彼女は図書館に訪れる。学校が終わって寄り道をしているのだろう。平日の彼女は、いつも高校の制服姿だ。
僕は、返却された本を書架に戻す手を止めて、彼女の方へ振り返る。
「愛里さん、こんにちは。その本は確か……既に貸し出されているはずですよ」
「そうですか……」
愛里さんは肩を落とした。余程その作家の本が好きなのだろう。
「今日学校の図書室でも探してみたんです。だけど、やっぱり貸し出されていました」
諦めがつかない様子で話す愛里さんに、僕は同情する。涸月つららの作品は、新刊が出る度に彼女の話のようなことが起こる。僕の職業が司書であっても、その現象は変わらない。
「他の作品は読みましたか?」
「勿論です! 今までの先生の本は全部読みました」
「では、『月のおと』は?」
「え?」
愛里さんの不思議そうな表情に、思わず笑みが溢れる。やはり知らなかったのだろう。 僕は得意げな気持ちを押さえて、説明をした。
「涸月つららは、別の名前で児童文学も書かれているんですよ。その児童書の代表作が、『月のおと』です」
愛里さんが驚く。そのような反応から、僕の情報がかなり希少なことだと分かる。実際、涸月つららは児童書を出版していることを公表していない。そのため、知っている人はかなり限られてくるだろう。
「そんなことも知っているなんてすごいですね。やっぱり、図書館で働いてるから詳しいんですか?」
「ええ、それもありますが……。一番の理由は、僕も涸月つららの作品が好きだからでしょうか」
「説さんもですか? 良いですよね、純文学が好きである人ほどはまってしまう感じで」
「そうですね。愛里さんは、どの作品が一番好きですか?」
どの本も好きですが……。と、彼女は頭を悩ませる。出版されている本の数は少ないが、一つも駄作がない。悩むのも当然だと思いながら、僕は答えが出るまで見守った。
因みに、僕が一番好ましい作品は、処女作の――
「『私の目に映る彼は』です」
今度は、僕が驚いた。それから、じわりじわりと喜びが込み上げてくる。
「僕もです。あれほど主人公の心情が伝わる作品は初めてでした。まるで、現実がそのまま小説になっているかのようです」
「それに、読み終わったあとにずっと本のことを考えてしまうんです。結局主人公は片想いのままで、好きな人と会えなくなっちゃったけれど、相手は主人公をどう思っているのか謎のままなんですよね……」
「そこは意見が別れるところですね。僕も……正直なところ、どちらかは分かりません」
「主人公も言ってますけど、本当に『狡い人』です。主人公どころか読者まで夢中になってしまいますよ」
今までも、愛里さんが図書館に現れる度に挨拶を交わしたことはあるが、今回は本当によく会話が弾む。
話し込んでみて分かったが、互いに好みが似ているようだ。何故もっと早く彼女に話しかけなかったのだろう。そう思ってしまうくらい、愛里さんとの会話は楽しかった。
それから愛里さんは帰り際に、『月のおと』を借りていった。
また明日来ます。と言ったので、待っています。と返事をした。

せっちゃん(説)とめぐちゃん(愛里)を純文学コンビと命名する!
やっとめぐちゃんが喋りました
まだまだ書きたいネタはいっぱいあるので
暫くは小説の記事が多くなると思います
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