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久世

Author:久世
元HNは「微雨」「雨月」でした。
「久世」に改名しましたが、どれも私には違いないのでお好きなHNで呼んでください。

・上の絵はまろさんに描いてもらいました!

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君の笑顔で花が咲く

Category : サブ創作小説
僕の好きな人は滅多に笑わない。
笑えないのではなくて、笑いたくないらしい。

「私、普通に生きたかったの」

閉店後の喫茶店。
カウンター席で、ぽつりと彼女が呟いた。
僕は食器を片付けていた手を止める。
物憂げに伏せられた目元が、なんと美しいことか。

「友達が欲しかった。恋人も、家庭も。誰かと幸せを築きたかったのよ」

でも、と形の良い唇が震える。
次の言葉が紡ぎ出される代わりに、一筋の涙が溢れた。
彼女は普通に泣けるのに、普通に笑うことができない。
花が咲いてしまうからだ。

彼女が笑うと、彼女を囲むように色とりどりの花が宙を舞うのだ。
それは、まるで魔法のように。
あるいは、呪いのように。
理屈など分からないのだから、解決法も見つかるわけがない。
彼女は奇怪の目を恐れ、笑わなくなってしまった。

「僕は好きなんだけどな。君の笑顔」

彼女は微動だにしない。
たった一つ、カウンターだけで隔てられているだけなのに、心の距離はうんと遠い。

嘘なんて言ってないのに、なんで伝わらないのだろう。
無機質さを帯びた西洋人形のようなその顔が、純粋な喜びを滲ませて、しかし笑いなれてないのかぎこちなく頬を緩ませる様子に、僕はとてもひかれるのだ。

静かに、何も言わず俯く彼女。
僕は何度もこのような彼女を見てきた。
周りからの声に聞く耳を持たず、心の中でずっと自分を責め続けているのだ。
何を言っても無駄なことは分かっている。

紅茶の茶葉と牛乳を小さな鍋に入れ、火にかけた。
僕が何度も彼女にしていることだ。

「はい、どうぞ」

鍋からティーカップにこしたロイヤルミルクティー。
カウンターに差し出すと、彼女が顔を上げた。

「おいしい」

そう言ってふわりと花を咲かせる彼女は、やっぱり綺麗だった。
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私の目に映る彼女は15

Category : サブ創作小説
 彼女と外食をしたときのことである。夕飯は彼女の手料理が殆どであり、彼女が出不精だった為、当時は斬新に思えた記憶がある。
 商店街を通り、最寄り駅から隣町へと移動する。改札を越えてからは、彼女の後ろをついて見慣れない場所を歩く。目的の場所まではそう時間は掛からなかった。大通りから細い道に入ってすぐ、ひっそりと一軒の店が佇んでいた。
 どこか商店街に構える喫茶店に雰囲気が似ている。少し前に時間が止まってしまったような店内。ここはどんなお店なのですか。席に座ったところを見計らい、私は彼女に尋ねた。
 彼女は一言、洋食。とだけ答えて、店員からメニューを受け取った。目の前に広げられたメニューは手書きの、料理名がずらりと並んだ素っ気ないものであった。
 彼女がハンバーグを注文したため、私も同じものを店員に伝えた。その瞬間、ふと視線を感じて目の前の相手を見たが、彼女は何事もなかったかのように視線を逸らした。
 一昔前の人の贅沢。そんな印象を持った。ハンバーグがどんな味だったとか、どんな皿だったとか、そのような記憶は随分と昔に薄れてしまったが、印象だけは強く根付いているようだった。
 ナイフとフォークの使い方が曖昧で、彼女が食べる様子を見よう見まねで試してみる。彼女はお手本そのものだった。とても器用に、それらの食器を使いこなすのだ。
「食べ方がとても綺麗ですね。羨ましいです」
 私の声で、彼女が顔をあげる。数秒、ぼんやりと私の顔を眺めていたがすぐに焦点が合う。
「教わったんだよ、昔」
 誰に。そう聞こうと口を開き、喉から出た言葉は、そうですか。と、会話を終わらせるものだった。聞いても答えてくれないことは経験からして明白である。
 彼女との食事は会話が少ない。それが決して居心地の良いものとは思わなかったが、それでも構わなかった。彼女と一緒に入れるならば、それで。
「私、告白されたんですよ。先週。結局断っちゃいましたけど」
 彼女は私を一瞥し、また皿へと戻す。遅れて、そう。とだけ返事が返ってきた。
 彼女の頭の中では、きっと私の顔も名前も知らない誰かが居座っているのだろう。遠くの誰かより、近くの私を見れば良いのに。そう不満に思ったが、口に出すことはしなかった。



久しぶりのわたかのシリーズ。
not同性愛です。
憧れと恋の感覚があまりにも近いので、彼女と私の気持ちが結構リンクすることがあるんです。
わたかののスピンオフ作品を1年前くらいから考えてますが、まだ形にすることは出来ません。
そのうちテーマが決定したら書き始めるかもしれません。

誓い

Category : サブ創作小説
「私はね、貴方の言葉が信用できないのよ」

 僕が愛を伝えれば、いつも彼女はそう答えるんだ。その横顔は、いまにも雨が降りそうな曇り空に似ている。

 誰もが寝静まっている時間。僕たちのはるか頭上には、白い三日月が慎ましく輝いている。僕たちの足元にも、夜空の色をいっぱいに吸い込んだ三日月がある。名前は、三日月湖。三日月の形をしている大きな湖だ。
 僕と彼女は、湖の畔に立っている。星のように瞬く、蛍に囲まれながら。

「君がそう言うなら、信じてもらえるまで何度でも言うよ。君が好きだから」

 出来るだけ僕の言葉を信じて貰えるように、声を潜めて、慎重に言う。それでも、彼女には伝わらない。彼女は首を横に振った。

「気持ちは嬉しいわ。それに、私は貴方のことを信じたい。貴方が好きだから」

 僕たちの周りをふわふわと漂う小さな光に視線を向けながら、でも、と彼女は俯く。
 黄色い光が、ぽつぽつと淡い青色に変化する。彼女の感情を表したように輝くそれらは、どうやら蛍じゃなかったようだ。

「貴方が羨ましいわ。貴方は、人が何を考えているのか分かるのでしょう?」

「そうだね……。でも、僕には君が何を考えているのか分からないよ」

 読心術のことを指されて、僕は頷いた。確かに、僕には心が読めるという特殊な力がある。ただし、どんなにそれが優れていても制限はある。彼女が思っているほど、この能力は万能な訳ではないのだ。
 僕はイルミネーションのように青い、不思議なものを一瞥する。この町には、現実離れした不思議な物事がたくさんある。僕の能力も、その一つだ。
 しかし、彼女は違う不思議を持っている。例えるならば、ガラスケースの中の綺麗な人形だ。彼女は普通の人間に過ぎないが、この世と一本線を引いて物事を捉えている。

「僕のことが信じられないなら、誓いを立てよう。一生君だけを愛し続けるよ」

「駄目よ。駄目なの……一生なんて短すぎるわ。貴方の愛は、百年も続かないのかしら?」

「じゃあ、百年。いや……千年だ。千年間、君だけを想い、生き続ける。これを守ることができたら信じられる?」

「ええ。そんなことができるのなら」

「出来るよ。僕にはとっておきの手段があるからね」

 自信たっぷりに言うと、彼女は顔をあげる。その少しだけ期待を秘めた目を、オレンジ色の光たちが照らした。

「本当に? 私が死んだとしても?」

「うん。君が生まれ変わるまで、僕はこの世で待っている。千年間ずっとね」

 光が変化する。橙色から桃色へ。
 彼女は少しだけ強張った顔をして、口をきゅっと結ぶ。それから、頬を赤らめて、押さえきれない嬉しさを溢した。僅に唇を緩ませていることは、彼女本人も自覚しているのだろう。誤魔化すように顔を背けた。

「もし……。もし、私が生まれ変わったら、また愛してくれるかしら?」

「もちろん。君がどんな容姿や性格であれ、僕は愛そう」

「私のことは分かるの?」

「分かるよ。だって僕は君の心が読めない。君だけが好きだからね」

「そう……」

 煌々と輝く不思議なものたちは、月に負けないくらいの光を放つ。その色は、彼女の顔にそっくりだ。それに釣られて、僕も頬が熱くなる。

「嬉しいわ、巡さん」

 彼女は微笑む。儚げに、美しく。
 僕はその笑顔に、千年の愛を誓ったんだ。



随分と前に書いていたものがあったので投稿

「観覧車に乗ろう」

Category : サブ創作小説
わたしは、夜中にこっそりと家を抜け出しました。

瞬く星を見上げながら、歩く道は好ましく思います。

ひんやりとした夜風が心地よいのです。

わたしは、夜中にばったりとあなたに会いました。

随分と久し振りの再会です。

わたしの知らない今のあなたは、とても大きく見えました。

見上げて、あなたに言います。

「観覧車に乗ろう」

わたしはあなたの戸惑う表情を気にせずに、手を引いて走り出しました。

きらきらと光る、遊園地を目指して。

次第にあなたも足並みを揃えて、わたしの隣を走ります。

昔は、いつも隣にあなたがいました。

こうして一緒に走ることはなかったかもしれませんが、一緒に笑ったりはしたのです。

またあなたの傍にいることができて嬉しく思います。

とても、とても、嬉しい。

わたしは一生、この出来事を大切に抱えて生きていくことになるでしょう。

観覧車を目の前に、わたしたちははしゃぎます。

まるで、子供の頃のように。

天まで届きそうなくらい大きな観覧車は、イルミネーションがきらきらと輝いています。

無人の観覧車に乗り込むと、ゆっくりと動き出しました。

少しずつ、少しずつ。

小さな町並みから雲の上へ、景色が変わっていくのです。

「怖いの?」

高いところ。と、続けてあなたは質問しました。

わたしは膝の上においていている手を握り締めて、頷きました。

それでも、手の震えは押さえきれません。

「でも、乗りたかったの。あなたと」

あなたはくすりと笑いました。

それは、呆れたように。

もしかしたら、慈しむように。

そしてそっと、わたしの手を、その大きな手のひらで包み込みました。

心地よい体温が伝わってきて、心までも温かくなりそうです。

見上げて、あなたと視線が合います。

急に目が合ったので、互いにびっくりして顔を逸らしてしまいました。

しかし、それが何故だかおかしな行動に思えてきて、同時にくすくすと笑いだしました。

体の震えは、すっかり収まっていました。

丁度、一番高いところまで観覧車が到達しました。

まんまるに輝く今宵の月は、とても綺麗です。

「楽しいね」

あなたのその言葉が、なによりも嬉しいものでした。

妙にむずむずして、心が落ち着かないくらいです。

それから、ぽたり。ぽたり。

わたしの目からは、一粒、二粒と涙が流れます。

ああ、泣くことは我慢しようと思っていたのに。

心配するあなたに、大丈夫だよと告げました。

だけど、いつもあなたの前のわたしは、泣き虫なようです。

幼い頃にあなたと喧嘩したときも、わたしの思い通りにいかなくて悔しい思いをしたときも、あなたの前では大粒の涙を流して情けない姿を見せたものです。

でも、良かった。

最後にあなたに見せる涙は、嬉し涙です。

ゆっくりと、時間をかけて観覧車は下りてゆきます。

わたしとあなたは一言も言葉を交わさずに、外の景色を眺めていました。

しんと静まり返っていましたが、その沈黙はとても穏やかでした。

観覧車が一周すると、自然と停止してドアが開きます。

外へと降りたあなたは、大きく伸びをしました。

それからだんだん明るくなっていく空を見上げます。

朝が近づいてきます。

あなたはわたしが観覧車の中から出てこないことを不審に思いました。

「もうすぐで太陽が昇ってくるよ。一緒に見よう、出ておいで」

わたしは首を横に振りました。

ドアが勝手に閉まり、寂れた観覧車は動き出します。

ぐるり、ぐるり、ぐるり。

観覧車は思い出を巡らせながら回ります。

いとしきあなたへ。

あなたはここにいるべきではありません。

わたしの頬に、一筋の涙が伝いました。



愛しき貴方へ

私の目に映る彼女は14

Category : サブ創作小説
 図書館で本を手に取ると、これは彼女の好きそうな本だなと思ったり、店で小物を見かけると、これは彼女に似合いそうだなと考える。そしてたまに、それらを借りたり購入したりする。彼女に贈ることはしないというのにだ。
 私は人並みに物欲はあるだろうが、過剰な程ではない。あれも欲しいこれも欲しいと衝動買いすることは滅多にしない。
 しかし、彼女が関連するとその感覚が鈍ってしまうようだ。彼女を思わせる物を見つけると、つい手を伸ばしてしまう。
 思わず手に入れてしまったそれらを彼女にプレゼントしようとするも、突き返されることは目に見えている。私の好みとは異なるため、自分で使うこともなく箪笥の隅に眠っている。捨てない理由は、いつか彼女に渡せるチャンスがあるだろうと、心の底で期待していたからだ。

 昔、彼女の部屋の掃除を手伝ったことがある。訪れたときに偶然掃除をしていて、その流れで私もすることになったのだ。
 彼女のクローゼットを開けても、必要最低限のものしかない。ここは掃除をする必要がないなと中を見回していると、隅の方に箱が隠れていた。白の無地の箱だ。
 両手で抱えて蓋を開ける。中にはアンティークな腕時計、派手なシルバーアクセサリー、小さな革のコインケース、それから、深い紫色の宝石が嵌め込まれているループタイなどが入っていた。
 見るからにして男性もののようだ。それに、上品に見えて派手さも備わっているそれらは、彼女には似合わない。
 彼女に箱を見せると、目を丸くしてどこにあったのかを聞かれた。彼女が感情を顔にするのはとても珍しい。私は内心で意外に感じながらも、箱が隠れていた場所を話した。
 箱を優しく撫でている彼女の目は、やはり私には見ることのできない、遥か遠くを見つめていた。それはもしかしたら、誰かの面影を思い浮かべているのかも知れない。

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